◇青海省と青海湖の旅◇

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青海省は中国の内陸部に位置し、チベット自治区に隣接する。高原と高山が大部分を占めており、 平均標高は3000メートル。そのうち標高4000〜5000メートルの地域が総面積の54%を占める。 最低標高は1650メートル、最高標高は6860メートル。中国の2大河川である黄河と長江は、 いずれも青海省に源流を持つ。

上海に来たばかりのころ、近所のレストランに青海省出身のウエイトレスさんがいた。 当時わたしはまだ中国国内の人の移動について何の知識も無かったので、少し驚いた。 上海からの距離で言えば青海省は東京よりも遠いのだから。 そんな遠くから、はるばる汽車に乗って上海まで出稼ぎに来るのは、きっと大変だろう。 がんばってね、という感じである。
その青海省まで旅行することになった。

上海からだと、まずは汽車で甘粛省の蘭州まで約2日の行程。軟臥と呼ばれる1等寝台で行けば楽勝である。 甘粛省の省都である蘭州市で一泊して、翌朝のバスで青海省の省都西寧に向かう。 蘭州から西寧までは、時刻表どおりにいけば4時間のバスの旅。
しかし、いつものことだが、地方の長距離バスは時間にルーズである。

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蘭州バスターミナル前


中国の長距離バスは、発車時刻になっても、満席になるまで出発しないことが少なくない。
なぜかというと、長距離バスの運転手は乗客数に応じて給与が支払われる仕組みになっている場合が多いからだ。 当然、何としても定員いっぱいまで乗客を獲得しようとする。地方に行くほど、この傾向は強い。

運転手らはどこで客を集めるのか?
@ まず一番多いのは、ターミナル前の路上、あるいはターミナル入り口。 すなわち、定刻に発車した後、ターミナルの入口外側で停車して、 ターミナルに入っていく客を片っ端から「尋問」して、自分のバスに乗せようとする。 蘭州バスターミナルでは、40分程度これをやっていた。 これでも記録の上では一応定刻にバスターミナルを出発したことになるらしい。

A ターミナル入口付近での客引きが一段落すると、次にバスは市内巡回モードに入る。
蘭州市内を自転車程度の速度で巡回しつつ、大きな荷物を持って歩いている人物がいると、 寄って行いって、行き先を尋ねる。
そんなに都合よく何百キロも離れた街まで行く乗客が見つかるものなのかと疑問に感じるのだが、 たまにはこの方法で捕獲される乗客もいるようだ。
この時は、これが1時間程度続いたか。

そういう訳で、バスは定刻を約2時間過ぎてようやく蘭州の街を出発した。
バスの中では眠ってしまったので道中の様子は良く分からないが、主として山岳地帯を走ったようだった。 唯一印象に残っているのは、あんな僻地の山の中でも、高速道路の建設をしていたことだ。 この国の発展の凄まじさを感じた。

余談になるが、中国に住んでいて感じるのは、「国家建設とは言語の統一と道路建設である」ということ。
中国では今、あの広大な国土の至る所で高速道路の建設がおこなわれている。
また、中華人民共和国建国以来の標準語教育(「普通話教育」)の成功については、 多言を要さないところだと思う。
国家が作られていく過程を目前にできるというところも、今の中国で生活する魅力のひとつだと感じる。

西寧には、夕刻に到着した。
青海省は、実はチベット文化圏に属している。現在、普通に「チベット」と言うと、 中華人民共和国の行政区分に従った「チベット自治区」を指すことが多いが、歴史的・文化的に見ると、 「チベット」の範囲はこれよりはるかに広い。 「チベット自治区」に加えて青海省および四川省の西半分を含む地域はすべて本来のチベットである。
実際に、西寧にも多くのチベット人が居住しており、街のいたるところでエンジ色の僧衣をまとった チベット仏教の僧侶を見かける。

また、青海省は同時にイスラム圏でもある。
中国の有名なイスラム圏は、自治区として認められている新ジャンウイグル自治区および寧夏自治区だが、 その周囲の各省にもイスラム色の強い地域が少なくない。
甘粛省と青海省には多くのイスラム教徒が居住しており、多くの有名なイスラム寺院があり、 街では白い帽子をかぶったイスラム教徒を多く見かける。

青海省の場合、これらの民族が総人口に占める割合は、チベット族が21.89%、回族(ムスリム)が15.89%とのこと。

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西寧駅前 (白い帽子のイスラム教徒の姿が見える)


西寧は小さな街だが、それでも高層ビルがたくさん建っている。 高層ビルが大好きな中国らしい都市計画である。
この日は早々にホテルをとり、ホテルの旅行社で翌日の青海湖1日ツアーの申し込みをした。
青海湖はこの旅の最大の目的地だが、そこまで行くには車をチャーターするか、または、 旅行団に参加するしかない。私は費用の関係で旅行団を選択。
ちなみに、この手の観光地を控えた都市の場合、3つ星以上のホテルならば、 たいていフロントで地元旅行社のツアーの参加手続を代行している。 前日に申し込めば参加できることが多い。
当然ながら他の参加者はみな中国人だが、別に心配は要らない。外国人が1人で参加しても全く問題ない。
翌日朝7時にホテルに迎えに来るとのことなので、この日は部屋でビールを飲んで、早めに寝た。

翌朝、旅行社のワンボックスカーがホテルまで迎えに来てくれた。
ツアー参加者は総勢8人、私以外はみな中国人。
市内のいくつかのホテルを回って参加予約者をピックアップしたのち、一路、青海湖に向かう。 しばらく山岳地帯を走ったあと、突然、大草原に出た。

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ひたすら真っ直ぐな道。向こうに見える白い山を越えるとチベットかも


草原の中に、なぜか突然砂丘が出現する。この砂がどこから来たのか全く不明。青海湖と関係があるのだろうか?
砂丘を越えると、湖面が見えてきた。その名のとおり青い色をしている。

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もうすぐ到着


湖畔についたら昼食である。昼食はツアー料金に含まれていないので、各自その辺の食堂で食べる。 私は牛肉麺か何か食べたんだったと思うが良く覚えていない。
昼食の後は各自自由散策。2時間くらい湖畔を散歩した。遊覧船もあり、心を惹かれたが、 うっかり乗ってバスの出発時刻までに戻ってこれないと顰蹙なので、やめておいた。

青海湖は中国最大の湖で総面積は4300Ku、周囲320km、湖面の標高は約3200メートル。 塩湖らしいが、舐めてみてもあまりしょっぱい感じはしなかった。

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青海湖


青海湖で遊んだあとは、往路とは違うルートで山岳地帯を抜けて西寧市内に向かう。
このあたりの標高は、大雑把に言うと、富士山の山頂と同じくらい。
空気はかなり薄く、高山病の兆候が出てもおかしくはない高度だが、年配の男性が一人体の不調を訴えただけで、 その他の参加者は全く問題なかった。

途中、有名な日月山を通る。ここを越えると漢民族文化圏ということになっている。
その昔、チベットに嫁ぐことが決まった中国のお姫様が、この峠を越えるときに、 「チベットなどという僻地に嫁がなければならない自分の不運に涙した」らしい。 こういう言い草がいかにも中華思想っぽくてなんとも言えず良い。その日月山で少し休憩。

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日月山あたりの景色。このあたりで多分標高3800メートルくらいか。
彼方にチベットの山が見える。


道路は一応簡易舗装がしてはあるが、相当な悪路だ。 我々の乗っているワンボックスはかなり年季が入っていて、サスペンションなど殆ど作動していないに等しい。 強烈に前後左右に揺さぶられる。
そのうえ、山岳地帯でブレーキを多用するため、すぐにブレーキパッドが加熱してしまい、 ブレーキが利かなくなる。したがって、スピードが出せない。
ときどき、運転手が車を止めて、ポリタンクの水でブレーキのディスクを冷やしている。 そのたびにもうもうと水蒸気が上がるのが恐ろしい。

途中で何台かのトヨタ・ランドクルーザーが風のように追い抜いて行った。 ランクルにとっては、この程度の悪路など全く問題にならないようだ。
後ろから見ていると、サスペンションが見事に作動しているのがはっきりとわかる。 さすが日本の技術である。チャーター料金もランクルは最高クラスであり、 中国でライセンス生産している北京ジープよりもかなり高いらしい。さすがは日本製である。

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現地で見ると、奥の岩山は息を呑む迫力。 「神を見た」という感じ。
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動物好きの向きにはこちらを。 こうしてみるとヤクも結構かわいい。


夕方暗くなった頃に西寧市内に帰り着いた。
西寧でもう一泊するか、汽車で移動するか迷ったので、とりあえず駅まで行って見る。
ちょうど内モンゴルの銀川市に行く汽車があり、内モンゴル未踏の私は切符売り場に駆けつけたのだが、 出発30分前を過ぎるとチケットは売らない決まりになっていると言われて諦めた。
後になって人から聞いた話では、適当なチケットを買ってプラットホームまで入り込み、車掌に
「この汽車に乗りたい!」
と直訴すれば、なんとかなるらしい。
この頃はまだ中国慣れしていなく、そんなことは仮に知っていたとしてもとても実行できなかっただろう。

仕方がないので、とりあえず蘭州まで戻ることにした。
蘭州に着いたあとは、適当な夜汽車もなかったので、市内のホテルで1泊し、翌日ふと思いついて西安に移動した。

西安での話は、省略。



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